参議院選挙
2022年7月10日、参議院通常選挙が行われました。
岸田文雄首相が首相になって約1年。その間に国内では新型コロナウィルス感染症の流行は続き、物価高もあり経済的にも苦しい状況が続いています。また、国際的にもロシアによるウクライナへの「特別軍事作戦」が続き、エネルギー価格が上昇しています。為替も極端な円安が続いており、内外にさまざまな問題が発生しました。それに対する岸田内閣の評価が問われる選挙であったと言えるでしょう。
選挙期間中には、安倍晋三元首相が銃撃され、死去するという事件もありました。投票日の二日前だったことから選挙に影響があるという意見もありました。影響があるとすると、自民党の元首相が銃撃されたことで、自民党に票が集まる「殉職効果」などが挙げられます。また、選挙期間に政治家を銃撃するということが民主主義に対する冒涜であるという批判から普段は棄権する有権者が投票所に足を運んだ可能性もあります。
実際に、 の調査を見ると、金曜日に安倍氏銃撃事件があり、その翌日の土曜日に投票された表を見ると自民党への投票が4%あまり増加しているというデータもあります。
しかし、選挙結果を見ると、影響は限定的であったと言えます。
投票の結果、与党第一党の自民党(自由民主党)が63議席を獲得しました。これは改選議席の過半数であり、 を組む公明党と併せて参議院の過半数を確保しましたので、与党の勝利と言えるでしょう。一方、野党では日本維新の会が議席を伸ばしました。一方、野党第一党の立憲民主党や共産党、国民民主党は議席を減らしてしまいました。今回の参議院選挙で野党は多くの一人区で候補者を統一して与党に対抗することがあまりできませんでした。そのため、野党候補が共倒れになってしまった選挙区もあったようです。
また、憲法改正に前向きな姿勢を見せている自民党・公明党・日本維新の会・国民民主党が参議院の議席の3分の2を確保しました。これは憲法改正の発議に必要な議席を確保したという意味があります。
投票率
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上のグラフは参議院通常選挙における投票率の推移です。1995年の第17回通常選挙の44.52%が最低投票率でした。そして、2019年の第25回通常選挙も50%を切る低投票率でしたが、今回の選挙はそれよりは投票率が上がり、52.05%でした。とは言っても決して高い投票率とは言えず、国民が政治に対して関心を持ち、投票という行動をするような取り組みも必要ではないでしょうか。
選挙のしくみ
参議院は任期が6年ですが、3年ごとに半数を改選します。3年ごとに必ずあるので、参議院の選挙を「通常選挙」と呼びます。これに対して、衆議院の選挙は衆議院議員全員を改選します。従って「総選挙」と呼びます。衆議院の任期は4年ですが、 があるため必ず何年ごとにあるということはありません。
参議院の選挙は選挙区選挙と比例代表制を組み合わせています。選挙区選挙は各都道府県を一つの選挙区として、各選挙区から1〜6名の議員を選出します。ただし、人口の少ない と 、 と は合区とし、2つの県で一つの選挙区となっています。
比例代表制は政党の得票数に応じて で議席を配分します。また、参議院の比例代表選挙は を採用しています。投票は政党名または候補者名に対して行い、当選者は得票数の多い順に決まります。
つまり、ドント式で議席数が決まり、具体的な当選者は得票数の多い順に決まるということです。
参議院の比例代表は全国単位で行います。さらに個人名での投票もあるので有名人に有利に働きやすいという特色があります。今回の選挙でも元芸能人や人気YOUTUBERなどの立候補が見られました。
参議院の比例代表制には「 」という制度もあります。特定枠から立候補した候補者は個人の得票に関わらず順位が上位になり、当選しやすくなります。特定枠を使うかどうかは各政党が決めることです。なお、特定枠から立候補した候補者は個人名を使った選挙活動はできなくなります。あくまで政党名での選挙活動しかできません。
衆議院の選挙は と を組み合わせています。このしくみを といいます。小選挙区は全国を小さい選挙区に分け、ひとつの選挙区から一人を当選させるというしくみです。このしくみだと、1位以外の立候補者は落選してしまいます。したがって、大政党に有利で二大政党制になりやすい・政権交代が起こりやすくなるという特色があります。1996年にこのしくみが導入されてから、民主党が政権を獲得したことがあります。
衆議院の比例代表は全国を11のブロックに分けて行われます。参議院との違いは候補者への投票はできない点が挙げられます。ドント式で当選者数を決めることは同じですが、当選者を決めるときは予め決めておいた順位に従って決めていきます。ただし、小選挙区との が認められており、比例代表の当選者を決めるときは小選挙区の当選者を排除した上で決めていきます。また、重複立候補している候補は同じ順位にすることが可能です。その場合、小選挙区での (本人の各得票数 ÷ 当選者の各得票数)が高い順に当選していきます。
選挙後の政治
2022年の参議院通常選挙が終わり、次の選挙の予定は解散がなければ2025年に衆議院と参議院の任期が切れるまでありません。つまり、3年間選挙がないのです。2021年の総選挙で自由民主党は単独過半数となる261議席を獲得しています。また、改憲勢力で3分の2以上の議席を獲得しています。つまり、岸田政権はしばらくの間衆議院でも参議院でも過半数を超える議席を確保したのです。これからの3年間は「黄金の3年間」などと言われ、岸田首相は安定した政権運営が可能になります。
岸田内閣は「 」を推し進めることを目指しています。「成長と分配の好循環」「コロナ後の新しい社会の開拓」を実現していくために、新しい資本主義実現本部を設置しました。しかし、円安と物価高が進み、海外ではウクライナをめぐる紛争が続いています。また、東アジアでも中国の台頭、北朝鮮の核・ミサイル開発問題など問題は山積しています。そのような中で統一教会と政治の関係をめぐる問題も起こりました。また、安倍元首相の国葬儀に対する批判も盛り上がりました。憲法改正も含め、決して簡単ではない問題がたくさんあるのが現状でしょう。
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