黒い雨訴訟
1945年8月6日、広島に原爆が落とされました。その直後に大雨が降りました。この雨を「黒い雨」といいます。この雨には放射性物質が含まれていたため、多くの人が被爆してしまいました。この雨は爆心地北西側に降ったとする記録があり、雨が降った地域以外にいた人は被爆者として認められていませんでした。しかし、それ以外の地域にいた住民も健康被害を受けたと訴えていました。その人たちが救済を求めて訴えていたのが黒い雨訴訟です。
2021年7月14日に広島高等裁判所で出た二審判決に対して、菅総理大臣は上告しないことを決め、原告側の全面勝訴が決まりました。菅首相は談話の中で、訴訟に参加していない同じ状況の被爆者についても「認定し救済できるよう、早急に対応を検討する」としました。黒い雨という言葉は井伏鱒二の小説で広く知られています。この小説は、原子爆弾投下後の広島の様子を描いたものです。今回の政府の決断は高齢化が進む被害者の救済を考えたとき、大きな決断だといえるでしょう。
行政訴訟
国や地方自治体を相手に起こす訴訟を行政裁判といいます。民事裁判と同じような裁判で、国民が自分たちの権利を守るために行います。よって、刑事裁判のように「有罪」「無罪」を争うものではありません。
同じような裁判で有名なものに「ハンセン氏病」の患者とその家族が起こした裁判があります。かつて、日本ではハンセン氏病にかかった患者を隔離し、人権を無視した扱いをしていたことがあります。それが誤りであったことが科学的に証明されました。患者とその家族は、自分たちが受けた扱いに対する賠償などを求めて裁判を起こしました。これも国に対して行われるので行政訴訟です。
ハンセン氏病の裁判の時は、2001年に当時の小泉純一郎首相が、2019年には当時の安倍晋三首相が控訴を断念しています。これらはすべて高齢化する原告のことを考えての決断です。決して国が原告の言い分を受け入れたわけではありませんが、首相の決断でこのようなことが行われています。
… 原爆が落とされた直後に広島に降った雨。放射能が含まれていたといわれる。
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