2022年 共通試験 地理B 第5問

問題演習

東北地方に住む高校生のリサさんとユイさんは、北海道苫小牧市とその周 辺の地域調査を行った。この地域調査に関する次の問い(問1~6)に答えよ。 (配点20)

問1

リサさんたちは、調査に出発する前に次の図1を見て、苫小牧市周辺の景観の特徴について考えた。図1から考えられることがらについて述べた文として最も適当なものを、後の1~4のうちから一つ選べ。

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2022年 共通試験 5-1

正解は③

地図の中でどのように見えるのかを創造することが大切。苦手な人は練習しよう。
① 樽前山が見えるのは左
② 列車からウトナイ湖が見えるのは左というより、後ろに近い。少なくとも列車の左手にみるのは不可能。そもそも、ウトナイ湖が見えるかが怪しい。この選択肢は少し迷う。
③ これが正しい。この選択肢を判定すれば②よりふさわしいことがわかる。
④ 樽前山は右手に見える。

問2

先生から借りた過去の5万分の1地形図(原寸、一部改変)を見たリサさんたちは、次の図2のように、苫小牧市周辺で多くの川が河口付近で屈曲し、流路が頻繁に変化していることに気づいた。川の流路が変化している理由を知るために、リサさんたちは、苫小牧市内の博物館を訪問して学芸員に質問した。リサさんたちと学芸員との会話文中の空欄ア~ウに当てはまる語句の組合せとして最も適当なものを、後の1~4のうちから一つ選べ。

リサ「なぜ、この地域では図2のように多くの川が河口付近で曲がり、海岸線と平行に流れるのですか」

学芸員 「苫小牧市の海岸は、直線的に砂浜が続くのが特徴です。これは、( ア )によって運ばれる砂の堆積が最も大きな理由です。他方で、この地域では( イ )になると、河川の流量が大幅に減少するため、河口付近が砂でふさがれて、川の流路がたびたび変わるのです」

リサ「( イ )には、河川よりも海の運搬・堆積作用の方が( ウ )なるとい うことですね」

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2022年 共通試験 5-2

正解は③

アについて、河川が運搬した土砂は沿岸流(海岸線と平行に流れる)の力で直線的な海岸線を形成する。潮汐だと、平行にはならない。イについて、河川の流量が少なくなるのは北海道では雪の時期。つまり冬期になる。ウについて、冬期は河川の流量が少なくなるので、海の運搬・堆積作用のほうが大きくなる。

問3

リサさんたちは、苫小牧港の整備と苫小牧市の発展について、市役所の職員から話を聞いた。次の図3は、苫小牧市周辺の概要と、陰影をつけて地形の起伏を表現した苫小牧港と室蘭港の地図である。また、後の図4は苫小牧港と室蘭港の海上貨物取扱量の推移を、図5は2018年における両港の海上貨物取扱量の内訳を示したものである。これらの図をもとにした、リサさんたちと職員との会話文中の下線部①~④のうちから、誤りを含むものを一つ選べ。

職 員 「室蘭港は、1960 年代まで工業製品や北海道の内陸部で産出されたエネル ギー資源を本州に積み出す、北海道でも有数の港湾でした」

リ サ「①室蘭港が、内湾に面していて波が穏やかな天然の良港だからですね」

職 員 「一方で、現在の苫小牧港は、1963 年に大規模な掘り込み式の港湾として整備されてから、急速に海上貨物取扱量を増やしていきます」

ユ イ「苫小牧港が発展したのは、②人口が多い札幌市やその周辺の地域に近いことと、北海道の中央部からの輸送距離が短縮できたためでしょうね」

職 員 「かつての苫小牧市では、戦前に立地した一部の大工場がみられる程度でした。苫小牧港が整備されて以降、港湾に関連する産業も成長しました。人口も増え、苫小牧市は北海道内で屈指の工業都市となりました」

リ サ「苫小牧市で港湾関連の産業が発達したのは、③魚港の近くが平坦で、巨大な倉庫や工場を造りやすかったことも関係していますね」 

職 員「2018年時点で苫小牧港は、北海道で最も海上貨物取扱量が多い港湾です。苫小牧港は、フェリーが海上貨物取扱量の半分以上を占めているのが特徴です」

ユ イ「フェリーを除いた海上貨物取扱量をみると、の④苫小牧港は、海外との貿易の占める割合が室蘭港よりも高いですね。苫小牧港は、北海道の重要な 海の玄関口となっているのですね」

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2022年 共通試験 5-3

正解は④

これも、「割合」と「量」の区別がきちんとついているかがポイント。量としては室蘭港が多いが、割合は苫小牧港のほうが多い。区別できるようにしましょう。

 

問4

市役所の職員の話に興味をもったリサさんたちは、苫小牧港整備以降の工業の変化を統計で確認した。次の表1は、製造業のいくつかの業種の変化について、北海道の製造品出荷額に占める苫小牧市の割合と、苫小牧市の製造品出荷額に占める各業種の割合を示したものである。また、表1中のA~Cは、食料 品、石油製品・石炭製品、パルプ・紙・紙加工品のいずれかである。業種とA~Cとの正しい組合せを、後の①~④のうちから一つ選べ。

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2022年 共通試験 5-4

正解は⑥

前問で「かつての苫小牧市では、戦前に立地した一部の大工場がみられる程度でした。」とあるのはエゾマツ・トドマツを利用した製紙パルプ業のこと。しかし、時間がたつにしたがって掘り込み港がつくられて周辺に新しい工場が成立した。それと共に製紙パルプ業の割合は減少した。よって、紙関連がA。また、北海道では石炭を産出していたが、石炭の産出も終わった。すると、石油・石炭は海外から輸入することになり、臨海指向型である石油・石炭関連工業が発展することになった。よって、石油・石炭関連がB。
食料品工業は北海道全体でさかん(札幌のビール、釧路の魚介類の加工等)なので、苫小牧だけが突出することはない。よって、食料品がCとなる。

問5

リサさんたちは、苫小牧市内のいくつかの住宅地区を歩き、建物や街並みの特徴をメモした資料1と、 1995年と 2015年の年齢別人口構成を示す図6を作成した。図6中のカとキは、資料1中の地区dとeのいずれかにおける人口構 成の変化を示したものであり、X年とY年は、1995 年と2015 年のいずれかである。地区dに該当する図と1995年との正しい組合せを、後の1~4のうちから一つ選べ。

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2022年 共通試験 5-5

正解は③

カの人口ピラミッドを見るとX年の人々がそのまま年を取ってY年になっている様子がわかる。したがって、1995年はX年。それに対して、キの人口ピラミッドをみると、年齢分布がそれほど変わらない。これは人がどんどん入れ替わっていることを示している(それに対してカは同じ人々が住み続けているということ)。
dとeを比べると、dは社宅であるからどんどん人は入れ替わる。それに対して郊外の一戸建ては同じ人が住み続ける傾向がある。
以上のことから、地区dを示すのはキとなる。

問6

 現地での調査を終えたリサさんたちは、学校に戻り調査結果と地域の問題について次の図7を見ながら先生と話し合った。図7は、1995年から2015 年にかけての人口増減を示したものである。また、会話文中の空欄Eには語句サとシのいずれか、空欄Fには文タとチのいずれかが当てはまる。空欄EとFに当てはまる語句と文との組合せとして最も適当なものを、①~④のうちから一つ選べ。

リ サ 「苫小牧市では、私たちの住む市と似た問題もみられました。空き店舗や空き地が増えたり、街に来る人が減少したりするなどの問題が、( E )側の市街地ではみられます」

先 生 「同じような問題は、全国の地方都市でも共通してみられます。では、この問題の解決に向けた取組みを、構想してみてください」

リ サ 「この問題の解決には、 ( F )が考えられるのではないでしょうか。この取組みは、温室効果ガスの削減にもつなげられると思います」

先 生 「いいですね。今回の調査と考察を私たちの住む市でも活用してください」 

( E )に当てはまる語句 
サ 市役所の西
シ 苫小牧港の北 

( F )に当てはまる文 
タ 郊外で大型の駐車場を備えたショッピングセンターの開発や、大規模なマンションの建設を進めること
チ 利用者の予約に応じて運行するバスの導入や、公共交通機関の定時運行によって利便性を高めること 

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2022年 共通試験 5-6

正解は②

人口減少の地域は市役所の西側を中心に広がっているのは図からわかる。また、温室効果ガスの削減につながる取り組みなので、郊外にショッピングセンターをつくっては自家用車の使用が増えるので、タではないことがわかる。チの公共交通機関の利用増加があてはまる。冷静に判断したい。

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