2022年 共通試験 地理B 第3問

問題演習

問1

社会や経済の変化は、伝統的な村落にも影響を及ぼす。次の図1は、富山県の砺波平野のある地域における、1963年と2009年の同範囲の空中写真である。図1に関連することがらについて述べた文章中の下線部①~④のうちから、適当でないものを一つ選べ。

この村落では、水田や畑などの耕地の中に伝統的な家屋が数十mから数百m間隔で並んでいる。1960年代以降、①農業の機械化や効率化のため、耕地は、一つの区画が広くなるように長方形状に区切り直された。また、②モータリゼーションに対応するため、かつての耕地を区切るあぜ道のほとんどが、舗装されて幅の広い道路に変わった。この地域では、1963年から2009年の間に③人口増加や核家族化の進展に伴い、耕地の一部は住宅地となった。④1戸当たりの敷地面積は、近年建てられた住宅よりも、伝統的な家屋の方が広い傾向がみられる

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2022年 共通試験 3-1

正解は②

②の「ほとんど」という言葉が不正解。確かに写真を見ると幅の広くなった道路が目立つが、耕地の間にはあぜ道が残っている。ほとんどが広い道路になったわけではない。③で引っ掛かった人がいるかもしれないが、写真の右の方を見ると耕地が住宅地になっている。敷地面積が比較的狭い住宅が並んでいるが、核家族化が進んで現代風の住宅が建設されたと考えられる。

問2

現代の都市では、生活を支える様々な公共サービスが提供されている。次の図2は、日本のある地域における人口分布といくつかの公共施設の立地を示したものであり、凡例ア〜ウは、交番・駐在所、ごみ処理施設*、500 席以上の市民ホールのいずれかである。公共施設名とア~ウとの正しい組合せを、後の①~④のうちから一つ選べ。
*ごみ処理施設には、最終処分場を含み、し尿処理施設は含まない。

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2022年 共通試験 3-2

正解は②

交番・駐在所はこの3つの中で数が一番多いはずである。人口密度の高いところを中心に置かれているが、低いところでも必要な施設なのでまんべんなく分布している。したがって、アがあてはまる。ホールとごみ処理施設は両者とも数はそれほど多くない。しかし、ごみ処理施設は人口密度が低いところにつくられる。悪臭などの公害が問題になるからである。したがって、ウ。ホールは交通が便利で人口密度が高いところにつくられる。500席以上ということはかなり大きなホールなので、中心部などにつくり、広い範囲から人を集めることをめざすことになる。

 問3

先進国の大都市内部の衰退した地区において、専門的職業従事者などの経済的に豊かな人々の流入と地区の再生が進む現象は、ジェントリフィケーションという概念で説明される。次の図3は、ある先進国の大都市の中心業務地区付近の概要といくつかの指標を示したものである。ジェントリフィケーションが みられる地区として最も適当なものを、図3中の①~④のうちから一つ選べ。

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2022年 共通試験 3-3

正解は④

ジェントリフィケーションとは再開発によって富裕層が流入すること。イメージとしてはスラムなどの貧困地域が高級住宅地に生まれ変わるということ。したがって、以前は貧困層の割合が高かったが、現在は富裕層が多くなったところである。当然富裕層は高学歴者が多い。また、家賃を考えると家賃が急激に上昇しているはずである。
以上のことを考えると、①と④が高学歴者の割合が増加し、賃料も上昇している。しかし、2000年の貧困率が高いのは④であり、①は以前から貧困率が低い。ということは、①は再開発によって富裕層が増えたのではなく、もともと多かったと考えられる。以上のことからジェントリフィケーションが起こっているのは④である。

ジェントリフィケーションという語は覚えておいてほしいが、問題中に意味が書いてあるのでここから考えることは十分できる。共通試験は「あきらめずに・理論的に考える力」がキーポイントになる。

問4

次の図4は、ヨーロッパの主要な都市の空港*における、ヨーロッパ以外から到着する航空便の旅客数の内訳を、出発地域別に示したものである。図4中のカ~クはパリ、フランクフルト、マドリードのいずれか、凡例AとBはアフリカと北アメリカ**のいずれかである。パリと北アメリカとの正しい組合せを後の①~④のうちから一つ選べ。
*一つの都市に複数の空港が存在する場合は合計値。
** 北アメリカにはメキシコを含まない。

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2022年 共通試験 3-4

正解は③

歴史的な関係から考えるとよい。といっても高度な歴史の知識が必要なわけでなく、旧植民地を覚えておく程度でよい。まず、イギリスはアメリカとの結びつきが非常に強い国である。それを考えるとAが北アメリカであることがわかる。当然、アメリカはどのヨーロッパ諸国とも深いつながりがあるはずである。フランスを探す。スペインは南米との結びつきが強いはずである。現在でも南米諸国はブラジルなど一部を除いてスペイン語を公用語としている。そして、フランスはアフリカとの結びつきが強い。アルジェリアなどサハラ諸国はフランスの植民地であった国が多い。以上のことから、カがフランクフルト、キがパリ、クがマドリードということがわかる。

 問5

次の図5は、人口ピラミッドを示したものであり、サとシはシンガポールとドイツのいずれか、DとEは国全体と外国生まれのいずれかである。シンガポールの外国生まれに該当するものを、図5中の①~④のうちから一つ選べ。

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2022年 共通試験 3-5

正解は①

まず、サとシを比べる。すると、シが高齢者が非常に多いことに気が付く。高齢化が進んでいるのはヨーロッパの特色である。ここからシンガポールはサ、ドイツがシだとわかる。
つぎに、DとEを比べる。すると、Dのほうが働き盛りの年代が以上に多いことがわかる。これは移民の特色である。シンガポールもドイツも労働力となる年代の移民が多いのが特色。以上のことから、①がシンガポールの外国生まれということになる。
ちなみに、シンガポールの外国生まれのグラフを見ると女性が多いことに気が付く。これは、東南アジアから西アジアにかけて家事労働をする女性(いわゆる家政婦)の外国人労働者である。フィリピンなどから移動する女性が多い。これは非常に特色的なので覚えておくとよい。

問6

人口増減は、国や地域により状況が異なる。次の図6は、いくつかの国における1980 年、2000年、 2019年の出生率と死亡率を示したものであり、①~④は、カナダ、韓国、バングラデシュ、マレーシアのいずれかである。マレーシアに該当するものを、図6中の①~④のうちから一つ選べ。

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2022年 共通試験 3-6

正解は③

出生率は先進国で低くなり、発展途上国で高くなる。4か国の中で早くから先進国であったのはカナダ。よって、①がカナダ。発展途上国であるのがバングラデシュ。よって、④がバングラデシュ。バングラデシュは近年繊維工業などを中心に発展してきているので徐々に出生率も下がっている。
韓国は先進国の仲間入りを果たしたが、知識として出生率が極端に下がっていることを知っておきたい。韓国は2020年には人口減少社会に転じ、出生率は0.84まで下がった。主要国の中では極端に低い数字である。よって、②が韓国。のこった③がマレーシアである。

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