1. 世界の森林(気候帯と樹種)
森林のタイプは、気候(特に気温と降水量)によって決定的に異なります。
| 気候帯 | 植生 | 特徴と用途 | 主な産地/例 |
| A気候 | 常緑広葉樹(硬木 ) | 多種多様な樹種が混在(多種混交林)。 [途上国での利用] • (1 ●●● ) : 地域住民の生活燃料(調理・暖房)としての利用が圧倒的に多い。これが局地的な森林減少の主因となることも。 [商業的利用] • 有用材(硬木): 特定の価値の高い木材(チーク、ラワン、マホガニーなど)が選択的に伐採され、輸出される。 | アマゾン盆地、コンゴ盆地、東南アジア島嶼部 |
| 有用材の例 | チーク材、ラワン材 | • (2 ●●● ): 堅く、耐久性・耐水性に優れるため、高級家具、船舶甲板、建築内装材に。 • (3 ●●● ): 比較的柔らかい硬木で加工しやすく、安価。合板(ベニヤ板)の主要原料として大量に利用される。 | チーク: ミャンマー、タイ、ジャワ島 ラワン: マレーシア(ボルネオ島)、インドネシア |
| C気候 | 混合林(落葉広葉樹・常緑広葉樹・針葉樹) | 人間の活動による影響を最も強く受けてきた森林。自然林が伐採され、人工林に置き換わっている地域が多い。 • 落葉広葉樹(ブナ、ナラなど): 家具材、床材。 • 針葉樹(マツ、スギなど): 建築材、パルプ材。 • 環境問題: 1980年代以降、ヨーロッパ(特にドイツ)で酸性雨による「立ち枯れ」が深刻化し、国境を越えた大気汚染対策のきっかけとなった。 | ヨーロッパ、北米東部、東アジア(日本、中国東部) |
| 代表例 | ドイツ「(4●●●)」 | ドイツ南西部の森林地帯。名称(シュヴァルツバルト)の由来は、密生した針葉樹(モミなど)の人工林が、内部を暗く(黒く)見せることから。 | |
| D気候 | 冷帯林(5 ●●● ) 針葉樹林(軟木) | 樹種が比較的単純(マツ、モミ、トウヒなど)。 森林面積、木材蓄積量ともに世界最大。北方林(Boreal Forest)とも呼ばれる。 • 特徴: 均質で加工しやすい軟木が大量に供給可能。 • 用途: 建築用材(角材、板)および紙・パルプの最大の供給源。 • 課題: 生育が遅いため、一度伐採すると回復に時間がかかる。 | ロシア(シベリア)、カナダ、北欧諸国 |

2. 木材の用途と林産資源
林産資源は、その利用目的によって大きく二分されます。
• 用材(産業用材)
建築資材、家具、合板、紙・パルプ(製紙原料)など、産業用に用いられる木材。
- 特徴: 先進国や新興工業国(中国など)での消費量が非常に多い。
- 針葉樹(軟木): 主にD気候帯から産出。建築材やパルプの主流。
- 広葉樹(硬木): 主にA気候帯・C気候帯から産出。家具や合板、内装材。
• (1 ●●● )
薪(まき)や木炭の原料となる木材。
- 特徴: 発展途上国(特にアフリカ、南アジア)での利用量が圧倒的に多い。
- 課題: 多くの地域で最も重要な生活エネルギー源であり、人口増加に伴う過度の伐採が砂漠化や森林減少の大きな原因となっている。
• 天然林と人工林
- 天然林 : 自然の力で成立・維持されてきた森林。
原生林 : 人間の影響を(ほぼ)全く受けていない、本来の自然が残る森林。(例:アマゾン奥地、白神山地)
二次林: 伐採や山火事の後、自然に再生した森林。 - (6 ●●● ): 経済的な木材生産などを目的に、人間が苗木を植えて育成した森林。
特徴: しばしば単一の樹種(スギ、マツ、ユーカリ、パームヤシなど)が密植され、効率的な収穫を目指す。
3. 世界の木材生産と貿易の現状
伐採量と森林面積
- 森林面積 (2020年, FAO統計):
- 世界総計: 約40.6億ha
- 上位: ロシア (20%)、ブラジル (12%)、カナダ (9%)、アメリカ (8%)、中国 (5%)
- 木材の伐採量 (近年の傾向):
- 針葉樹(軟木): アメリカ、ロシア、カナダが上位。D気候の(5 ●●● )や、アメリカ南部の広大な植林地からの生産が多い。
- 広葉樹(硬木): インド、中国、ブラジルが上位。
- インドの多さは国内の膨大な人口を支える(1 ●●● )利用が主因。
- ブラジルは、熱帯雨林の(合法・違法な)伐採や農地転用が背景にある。
- 中国は、国内の経済成長に伴う需要(家具、内装材)の増大が背景。
木材の輸出入(貿易)
- 輸出量: ロシア、カナダ、ニュージーランド、アメリカなど。
- ロシア、カナダ: 広大なD気候の針葉樹林(5 ●●● )が資源。
- ニュージーランド: 人工林(主にラジアータパイン)からの輸出が非常に多い。
- 輸入量: 中国が他を圧倒 (約33%)。次いでアメリカ、ドイツ。
- 中国の特異性: 「世界(せかい)の工場(こうじょう)」として、世界中から原木(丸太)や製材を輸入。
- 国内で家具や合板などに加工し、完成品をアメリカやヨーロッパ、日本へ再輸出する「加工貿易」の拠点となっている。
【コラム】 アメリカの木材貿易
アメリカは世界有数の木材生産国(輸出上位)でありながら、同時に輸入も多い。
- 生産・輸出: 西部(オレゴン州など)で生産される木材は、地理的に近いアジア(日本、中国など)へ輸出される。
- 消費・輸入: 東部(メガロポリスなど)の人口密集地・消費地は、国内の西部から陸送するよりも、隣国カナダから輸入する方が輸送コストが安い。
4. 日本の林業と木材利用
日本の森林の現状
- 森林面積: 国土の約(7 ●●● )(約67%)を占める、世界有数の森林国。
背景: 国土の多くが急峻な山地であり、農地や居住地として利用しにくかったため。 - 構成: 人工林が約4割、天然林が約5割(その他1割)。
人工林の多くは、第二次大戦後の復興期に植林されたスギ、ヒノキが占める。
日本の林業が抱える課題
日本は国土の7割近くが森林であるが、木材自給率は約30~40%台(2020年頃)と低い。
- 理由:
価格競争力: 輸入材(特にロシアやカナダの軟木、ニュージーランドの植林木)が安価。
高い生産コスト: 急峻な地形で林道整備が遅れ、小規模な森林所有者が多く、大規模化・効率化が困難。
林業従事者の高齢化と後継者不足。 - 結果: 戦後に植林された多くの人工林が「伐り時」を迎えているにもかかわらず、採算が合わずに放置される森林が増加。手入れ不足による森林の荒廃が問題となっている。
有名な森林・樹種
- 日本の三大美林:
- 天然: 青森ひば、秋田すぎ、木曽ひのき
- 人工: 天竜すぎ(静岡)、尾鷲ひのき(三重)、吉野すぎ(奈良)
- (8 ●●● ): 青森県と秋田県にまたがる、世界最大級のブナの原生林。貴重な生態系が評価され、世界自然遺産に登録 (1993年)。
- 屋久島: 鹿児島県の島。樹齢1000年を超える屋久杉の巨木で知られ、世界自然遺産に登録 (1993年)。
日本の木材輸入先の変化(南洋材)
合板(ベニヤ)の原料となる南洋材(熱帯雨林の広葉樹)の輸入先は、資源の枯渇や現地の環境保護政策(原木輸出禁止など)によって変遷してきた。
フィリピン (1960s) → インドネシア (1970s) → マレーシア (1980s-90s) → パプアニューギニア (2000s~)

5. 【重要課題】 森林減少と持続可能性
林業を学ぶ上で、森林が直面する地球規模の課題は欠かせません。
• 熱帯雨林の減少
- 原因:
プランテーションへの転換: パーム油(アブラヤシ)、天然ゴム、大豆、カカオなどの商品作物を栽培するため。
牧場の造成: 特に南米(ブラジル)での牛の放牧のため。
焼畑(やきはた)農業: 伝統的な循環型ではなく、人口急増による過度な焼畑。
(1 薪炭材 )の過剰な採取、違法伐採。 - 影響: 生物多様性の損失、地球温暖化の加速(CO2吸収源の喪失)。
• 持続可能な森林経営 (SFM)
木材を資源として利用しつつ、森林の生態系や環境を未来にわたって維持していこうとする考え方。
• 森林認証制度 (FSC / PEFC)
- 持続可能な方法で管理されている森林から産出された木材・木材製品に、認証マークを付ける制度。
- (9 ●●● ) (Forest Stewardship Council: 森林管理協議会) が世界的に最も有名。
- 消費者が認証マークの付いた製品(紙、家具、トイレットペーパーなど)を選ぶことで、違法伐採を防ぎ、適切な森林管理を支援することに繋がる。


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