核兵器廃絶を目指して

核開発の歴史

1938年にドイツでウランの核分裂反応が発見されると、原子爆弾開発の可能性が探られました。第二次世界大戦が始まると、ドイツが原子爆弾の研究を開始しました。枢軸国が原子爆弾を開発し、世界がファシズムに征服されることを恐れた連合国でも原子爆弾の研究が進みます。その最も有名なものがアメリカによるマンハッタン計画です。亡命ユダヤ人のアインシュタインの進言もあり、オッペンハイマーを中心に計画が進められました。

1945年にナチス=ドイツが降伏した後も開発は進められ、1945年8月6日には広島に、8月9日には長崎に原子爆弾が投下されました。

第二次世界大戦が終わると、冷戦が始まります。そのような中で核保有国も増えていきます。

国名核兵器保有年
アメリカ1945年
ソ連1949年
イギリス1952年
フランス1960年
中国1964年
NPT加盟国で核保有をしている国

上記の5カ国はそのまま安全保障理事会の常任理事国です。冷戦期は核抑止力理論を掲げ、各国は核兵器を開発していきました。

抑止力理論というのは、核兵器を持っていることで戦争を避け、自国を防衛することができるという理論です。

例えば、目の前にいる人がピストルを持っていたら、その人に対して喧嘩を仕掛けようとは思いません。つまり、ピストルという武器を恐れているのです。これを相手側から見たらピストルを持っていることで身を守ることができたということになります。

この時、ピストルに弾が入っているかどうかはあまり関係がありません。弾がなくても相手遅れてくれればいいのです。

北朝鮮の核実験によって北朝鮮が何発の核兵器を持っているかは関係ありません。相手が「北朝鮮は核兵器を持っている」と思ってくれればいいのです。

核兵器は使用してしまうとあまりにも大きな被害をもたらします。つまり使うことのできない兵器という側面も持っています。それでも「持っている」ということが自国を防衛するために必要であるとされている。これを「核抑止力」と言います。

しかし、1954年にアメリカのビキニ環礁での核実験によって第五福竜丸事件が起こると、反核兵器運動が盛り上がりを見せます。この頃のエンターテイメントを見ても、「鉄腕アトム」のように原子力を夢のエネルギーと捉えるものもあれば、「ゴジラ」のように核兵器をネガティブに捉えているものもあります。1955年には、広島で第一回原水爆禁止世界大会が開かれます。ここではアインシュタイン博士も、日本初のノーベル賞学者である湯川秀樹博士も開催に尽力しました。

核軍縮の努力

部分的核実験禁止条約

1962年に部分的核実験禁止条約が採択され、1963年に発効しました。この条約によって地下以外の核実験は禁止されます。

核拡散防止条約(NPT)

1968年にはNPT(核拡散防止条約)が採択され、1970年に発効しました。この条約では、核保有国をこれ以上増やさないこと、核保有国は核兵器廃絶に向けて努力することが定められました。しかし、核保有国は核兵器を合法的に保有できてそれ以外の国はダメというのは不公平であるという批判もあります。

NPTに参加しなかった国の中には核実験を成功させ、事実上の核保有国となった国もあります。1974年にインド、1998年にパキスタン、2006年には北朝鮮が核実験に成功しています。核実験に成功したということは、核兵器を保有しているということです。

また、核兵器を保有していると見られている国はイスラエルです。南アフリカ共和国は一時核兵器を保有していたと見られています。さらに、イラン・シリア・ミャンマーなどに核兵器開発疑惑があるというのが現状です。

このようにNPTが締結されたからといって、簡単に核保有国が減っていくわけではなかったのです。

包括的核実験禁止条約

1996年には包括的核実験禁止条約が結ばれました。これによって全ての核実験が禁止されますが、発効条件が達成されていないため、現在でもまだ発効されていません。

米ソ間の条約

一方、米ソ間では87年にはINF条約により中距離核戦力を全廃し、91年にはSTART 1によって戦略核兵器を制限するという条約に署名しました。

核兵器禁止条約

そして、2017年には核兵器禁止条約が国際連合で成立しました。これは核兵器の保有や使用を全て禁止するという内容です。画期的な条約ではありますが、核保有国はもちろん、アメリカの核の傘に守られている日本や韓国などもこの条約には参加していません。

2022年6月にはオーストリアのウィーンで核兵器禁止条約を結んだ国々による国際会議が開催されました。ここでは、核廃絶に向けた取り組みをまとめた「ウィーン行動計画」が採択されました。

2022年の8月にはNPT再検討会議が国際連合本部(ニューヨーク)で開催されました。この検討会議は5年に一度開催されるもので、今回の会議には日本から岸田首相が参加しました。日本の首相が参加するのは初めてのことですが、今後の行動について示した最終文書はロシアの反対で採択できませんでした。

ウクライナ紛争と核兵器

2022年1月、アメリカ・ロシア・イギリス・中国・フランスの核保有5カ国は「核戦争に勝者はなく、決して戦ってはならない」とする共同声明を発しています。

しかし、2022年2月にはロシアがウクライナに侵攻します。紛争が長期化すると、ロシアのプーチン大統領は度々核兵器の使用に触れました。核兵器が使用される恐れが、キューバ危機と同じように高まっていると言われています。

また、このことは核抑止力が現在でも有効であることを再認識させたとも言えます。核兵器を持っていることは自国を防衛するために非常に有力であるということです。

それを受けた行動かわかりませんが、2022年は北朝鮮によるミサイル実験も繰り返し行われました。

核なき世界を訴えてノーベル平和賞を受賞したのはアメリカのオバマ大統領でしたが、核なき世界は遠のいているといえるでしょう。

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