夏期講習(産業)2

アジアNIEs諸国は当初日用品などの輸入品を国内で生産する輸入代替型で工業の発展を目指した。しかし、それでは国内市場が小さいため十分な発展はできないとわかり、先進国へ製品を輸出する輸出志向型にきりかえ、先進国から資本や技術を導入し、その国の安い労働力を利用して安い製品を生産し輸出しました。これによって経済発展を遂げています。

また、社会主義・資本主義という区分は21世紀になってからあまり意識されなくなりました。まず、「計画経済」といったら社会主義のこと、「市場経済」といったら資本主義のことということを覚えましょう。

答 ①

鉱業の立地理論です。この問題は単純に図を読み取るだけ。①~④の場所で輸送費がいくらかかるか冷静に読み取ってください。

答 ④

セメント工業が考慮するのは原材料の輸送費か製品の輸送費か考えましょう。原材料であるならば原料指向型、製品ならば市場志向型工業となります。中学生までの社会でセメント工業のさかんな場所を学習したはずです。「山陽小野田」「宇部」「秩父」などの立地条件を考えてみてください。

セメントの原料は石灰石。そこからセメントを作ります。当然石灰石の方が大きくて重いはずです。つまり、原材料の方が輸送費がかかるので、原材料が取れるところの近くで工業を行います。

労働集約型工業はたくさんの人がいれば成立するという工業です。ということは、「人件費が安いと有利」ということでもあります。

答 ①

アルミニウムの原料はボーキサイト。精錬時に大量の電力が必要なので、アルミニウム工業は「電気の缶詰」とよばれます。日本ではかつて静岡県で行われていました。水力発電を利用したものでしたが、現在ではほとんど行われていません。

アルミニウム生産上位国(2019年)は、中国・ロシア・カナダ・インド・UAE・オーストラリア・ノルウェーですが、この中で水力発電が中心の国はカナダとノルウェーです。つまり、「すべて」というのは言い過ぎですね。

選択肢から誤った文章を見つけるときには「限定する言葉」と「対義語のある言葉」には注意してください。

その他の文章はすべて正しいです。鉄鋼業は「原料指向型工業」です。日本では原料を産出しないので、輸入しやすい沿岸部に発達しますが、考え方としては同じです。一方、「市場志向型工業」は製品のほうが重く輸送費がかかる場合や原料がどこでも取れる場合がこれにあたります。ビールや清涼飲料が有名です。出版印刷なども製品がかさばるためこれにあたります。

答 ①

これも大きな問題はないと思います。原料指向型ならば原料の産地で生産し、市場志向型ならば市場で生産します。考えることができれば得点できる問題は確実に得点しましょう。意外とここで差がついていると思います。

牛乳(本当は生乳と言います)を生産して、工場に運び、そこで製品にします。

生乳は液体です。量も大きいですね。ところが、バターにするとあら不思議。個体になります。かなり小さくなります。つまり、生乳を運ぶのは大変だけど、バターにして運ぶのは楽ちんです。そうしたら、牛を飼っているところの近くに工場を作った方がいいですね。

逆はアイスクリーム。個体になりきっていません。だから量もそこまで小さくなりません。さらに大変なのは冷やさなければいけないということ。つまり、生乳よりある意味扱いにくいのです。だったら、冷凍しなくてもいい状態で運んできてからアイスクリームにした方がいいでしょう。つまり、消費地の近くに工場は作られます。

牛乳は生乳と同じようなものです。(実際は違いますが)したがって、生乳を運ぶのも牛乳を運ぶのも同じようなものでしょう。だったら、工場はどこにあっても同じですね。

答 Jーシ、Kーサ、Lース

ここまでの説明で全く問題ないと思います。製品が重くなるので市場指向型の工業の代表は……

答 ④

ちなみに、ビールは市場指向型(大麦とホップに水を混ぜて煮込んで作ります = 原料の大麦とホップよりもビールの方が量が大きくなり、運ぶのが大変)ですが、ワインは原料指向型(ブドウを絞って作るので、原料より量が小さくなるので、原料を運ぶのが大変)です。この違いが出題されたこともありますので注意しましょう。

もちろん、出題意図は考えてくれという意図でしょうが、覚えてしまった方が楽でしょう。

解答は特に問題がないと思います。なぜこの問題を扱ったかというと、過去問演習の重要性を知ってほしいからです。センター試験が共通試験に代わっても基本的には同じだと思います。試行テストも含めた共通試験の過去問、そしてセンター試験の過去問をよく研究して、地理の感覚に慣れてほしいと思います。

答 ②

各国の産業の特色のイメージが持てていれば解けると思います。

アルジェリア = 石油(天然ガス)の産出

バングラデシュ = 繊維工業

ベトナム = 機械工業

答 ⑤

シンガポールとトルコに対するイメージと、産業がどのように発達していくのかを考えましょう。

まずはトルコですが、ヨーロッパとの結びつきが強い国です。次にEUに加盟するのはトルコであるといわれる通り、決して発展途上国ではありません。1990年から2015年にかけて工業が発展したようですが、軽工業・素材工業 → 重化学工業・製品 という変化を理解していれば問題ないと思います。イには衣類がはいるのでしょう。発展とともに人件費も上昇し、衣類の生産はバングラデシュなどに移動しました。いつか、バングラデシュもこのような変化が起こるのでしょう。最近ウクライナ紛争がらみのニュースでよく聞く国ですが、地理だと工業の変化が重要になると思います。

シンガポールは1990年の段階で先進国です。そして、中継貿易が行われています。非常に狭い国なので工業を発展させるだけの土地はありません。外国から製品を輸入し、それを別のところに輸出するという形の貿易をしています。よって、アは電気機械が入るでしょう。のこったウが果物でいいと思います。

答 ④

考え方は全く同じで問題ないと思います。韓国はかつて軽工業(せんい)がさかんでした。どこの国でも発展するにしたがって軽工業から重化学工業へと工業は変化していきます。また、フィリピンはかつて日本にさかんに木材を輸出していた国です。しかし、過伐採によって輸出できなくなってしまった。次はインドネシアで同じようなことが起きました。マレーシアやベトナムは同じ事にならないといいですね。

韓国の自動車についてはあまりイメージがありませんが、ヒュンダイ(現代)自動車など有名な企業があります。国別の生産台数では5位に入っています。現在は1位中国、2位アメリカ、3位日本、4位インド、5位韓国となっています。

答 ①

粗鋼生産については、中国が一位、インドが急激に伸びてきているというのが現状です。(そもそも、21世紀に入って急激に伸びているのが中国とインドというのはあらゆる分野で当てはまりそうですが)また、ロシアがそこそこの生産量を挙げている(ソ連は世界一だった)というのもヒントになると思います。造船については、20世紀は日本が一位 → 2000年代は韓国が一位 → 2010年代以降中国が一位、ただし韓国と激しく争っている と覚えていいと思います。

工作機械は「機械を作るための機械」です。もともと日本が一位でした。また、ドイツでも盛んに生産されています。そこに入ってきたのが中国。しかし、中国は国内需要が多いため生産量は多いですが輸出量はドイツ・日本が1位2位です。下のリンクから画像を見てみてください。

答 ①

それぞれの工業がさかんなところを想像しましょう。

パルプ工業は針葉樹林の分布と一致するはず。北欧を思い浮かべればいいのではないでしょうか。綿織物は繊維工業がさかんな地域。人件費が安い国を考えるとインドや中国の円が大きいことから選べます。作業用機械は日本が有名ですね。

統計資料については、「日本はわかるようにする」は大原則です。もちろん、各項目の特色のある国は覚えるようにしましょう。

答 ⑥

見た瞬間ぎょっとするグラフですね。落ち着いて情報を整理しましょう。

横軸が造船。造船について日本は1970年 50% → 2007年 30%に減少しています。しかし、B国は0%と35%と移動しています。すると、韓国が思い浮かびますか?韓国は2000年代世界一の造船国家になったんでしたね。これで解けると思います。

粗鋼で解くことは不可能ではないと思いますが、造船で考えるのがわかりやすいのではないでしょうか。

答 ②

自動車の生産台数上位は中国、アメリカ、日本、ドイツ、インド。当然今後インドが上位に挙がってくると予想できます。この中で国内の販売台数が多いのは中国とアメリカ。ということはアメリカは生産台数に対する輸出台数の割合は低いはずです。

また、「近いところとの貿易はさかんになる」という原則から行くと、ドイツはヨーロッパに対する輸出、メキシコ(USMCAがある)はアメリカへの輸出が多くなるはずです。日本はアメリカに対する輸出が多いのが特色であるし、中国が近いことを考えるとアジアへの輸出も盛んなはずです。

ちなみに日本の自動車会社は現地生産がさかんで、国内での生産台数は900万台強、海外での生産台数は1900万台強です。

答 ③

USMCA諸国の問題です。アメリカは中心となる国ですから簡単でしょう。

カナダとメキシコについては、いくつか覚えておくといいと思います。

① 輸出総額・輸入総額は カナダ > メキシコ

② カナダは中国・イギリスなどへの輸出額がメキシコ相手の輸出額より大きい。つまりメキシコへの輸出額そのものはそんなに大きくない。

③ メキシコの輸出相手国はアメリカとカナダがほとんどを占める。つまりカナダへの輸出額もそこそこ大きくなる。

答 ③

これもそれぞれの国の特色をつかめれば解けると思います。

モロッコ、ザンビア、ケニアなどは「なにそれ、しらない」ではなく、特色があるからこそ出題されます。この機会に覚えてしまいましょう。

モロッコといえば魚介類。ちなみにみなさんが食べているタコはモロッコやモーリタニアからたくさん輸入しています。

ザンビアといえば銅ですね。タンザン鉄道というのが出てきたの覚えていますか?

アルジェリアは北アフリカにある旧フランスの植民地です。北アフリカはヨーロッパとの結びつきから早い段階から工業が発達しています。そして、アルジェリアは天然ガスも有名です。余談ですが、「アルジェの戦い」という映画。おすすめですよ。

答 ③

製造業の全雇用者の時間当たり賃金とありますが、これは一人あたりGNIに比例するはずですね。そうすると、イギリス > 韓国 > ブラジル・中国となるはずです。

中国とブラジルを考えると、ブラジルのほうが農業国というイメージが強いでしょうか。また、ブラジルは鉄鉱石などの地下資源もたくさん産出します。鉱業は第二次産業ではありますが、製造業ではありません。製造業がさかんなのは 中国 > ブラジル となるはずです。中国は「世界の工場」と呼ばれていることから分かりますね。

答 ③

製造業の雇用者一人当たりの工業付加価値額、なんていわれるとドキドキしちゃいますね。でも、よく文章を読んでみましょう。各国の経済発展と関係していると書いてあります。各国の経済発展を示す指標ってなにかありましたっけ?そう、「一人あたりGNI」ですね。

一人あたりGNIが日本より高そうなのはスイス。韓国は日本とほぼ同じくらいのはずですね。のこっているメキシコと中国ですが、中国のほうが製造業がさかんなことから解くことができると思います。

答 ②

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