円安と物価高

進む円安

外国の通貨と交換することを為替といいます。そして、そのときの交換比率のことを為替レートといいます。第二次世界大戦後、ドルを基軸通貨とした体制が構築されました。ここでは、1ドル=360円で固定されていました。その後1ドル=306円という時代もありましたが、現在は変動相場制となっています。ここでは、常に為替レートは変化しています。

変動相場制ではどのように為替レートが決まるのでしょうか。もし、ドルが欲しいという人が多ければ、ドルがたくさん買われます。すると、ドルは高くなります。もし、ドルはいらないという人が多ければ、ドルがたくさん売られます。すると、ドルは安くなります。

これを円との関係で見てみましょう。ここに1ドルがあります。これを買ってくると考えてください。1ドルというお札(コインでもいいです)を買うということがイメージしずらいかもしれません。単純に「もの」と考えてみてください。

みんながドルが欲しいと言っている場合、ドルが高くなります。これは、どういうことかというと、例えば1ドル=100円だったものが1ドル=120円になるということです。「1ドル」というものを買うのに100円で良かったのが120円になっちゃったのです。つまり、「ドルが高く」なっています。

逆にドルなんかいらない!とみんなが言っている場合、ドルが安くなります。これは、どういうことかというと、例えば1ドル=100円だったものが1ドル=80円になるということです。「1ドル」というものが100円から80円になったということは「ドルが安く」なっているということです。

ドルと円の関係で言えば、ドルが高くなれば円は安くなります。ドルが安くなった場合、円が高くなるということです。

先ほどの例でみてみましょう。1ドル=100円だったものが1ドル=120円になった時はどういうことが起こっているでしょうか。1ドルを払うと「円」というものが100個手に入っていました。それが、1ドルを払うと「円」というものが120個手に入ることになりました。つまり「円が安く」なっています。

わかりずらかったら、飴玉で考えてみてください。今まで1ドルで飴玉が100個手に入りました。でも、今日からは1ドルで飴玉が120個手に入ります。ラッキーですね。飴玉が安くなった!ということです。

1ドル=100円だったものが、1ドル=80円になったら1ドルで「円」というものが100個手に入っていたのに、80個しか手に入らなくなってしまったということです。同じ金額なのに手に入る量が少ない。残念ですね。「円が高く」なってしまったということです。

2011年には1ドルが75円まで行きました。「円高」になったということです。安倍首相による経済政策を「アベノミクス」と呼びます。これが始まると円は徐々に安くなっていきます。そして、2022年4月には1ドル=126円まで安くなりました。そして、9月には140円台をつけます。どんどん円安が進んだということです。

円安の影響

円が安くなると何が起こるのでしょうか。

一番の問題は輸入品の値段が上がるということです。

例えば、100ドルのものを日本に輸入したとします。1ドル=100円ならば、10000円で輸入することができます。ところが、1ドル=120円ならば、12000円で輸入することになります。我々日本人にとっては、輸入品の値段が上がってしまうということです。つまり、輸入はどんどん不利になりますし、盛んでなくなっていくということです。

一方、輸出には有利です。1ドル=100円の時、12000円のものは120ドルになります。ところが、1ドル=120円ならば100ドルになります。アメリカ人にとってはラッキーですね。日本からいろいろなものを輸出した時にアメリカ人はどんどん買ってくれます。

しかし、現実的に現在の日本は以前ほどものを作って輸出するという国ではなくなっています。中国が「世界の工場」の立場をしっかりとしたものにしてしまい、機械類についても輸入が多くなっています。エネルギー資源や食糧も輸入が多くなっています。

従って、日本では全般的に物価が高くなってしまう、つまり、市民が非常に苦しむということになっています。

円安の原因

新型コロナウイルス感染症の拡大とロシアによるウクライナ侵攻は世界的な物価高をもたらしました。アメリカは物価高を抑えるために、金利を上げて対応しました。一方、日本は金利を上げていません。

例えば、アメリカの金利が10%、日本の金利が1%だったらどのようなことが起こるでしょうか。

まず、日本で100万円を借ります。1年後に金利1%ですから、101万円返さなければなりません。

一方、アメリカで100万円を預けます。1年後に金利10%ですから、110万円受け取ることができます。

ここで借金を返せば、9万円儲かることになります。

しかし、日本で借りてアメリカで預けるということは、その過程で「円はいらない!ドルが欲しい!」ということが起こっています。つまり、円をドルに変えるということです。

上記のように、「円はいらない!ドルが欲しい!」ということは円安(=ドル高)になるということです。こうして、日本とアメリカに金利差が生じたことで円安が進んでいるのです。

今後の見通しについては間でもさまざまな意見があるようです。ただし、一朝一夕に元のような為替水準に戻るということは考えづらく、しばらくは円安が続くという見通しが多いようです。

物価高

2020年の新型コロナウイルス感染症拡大は各地で工場が停止し、サプライチェーン(供給連鎖)の脆弱性が露見しました。つまり、物が作れなくなり、さらに作ったものが消費者の元へ運ぶことが困難になったのです。すると、物が不足しますから物価は高くなります。

そこにウクライナ紛争によるエネルギーと穀物価格の高騰が起こります。

さらに、日本では円安による影響が物価を押し上げます。特に電力は資源を輸入して発電しているので、電力価格の上昇を呼びます。電気は全ての産業で使うものと言っても過言ではありません。当然私たちの生活にも必須のものです。

つまり、生活と産業全ての面で必要なものの価格が高騰したのです。2022年9月には物価上昇率が前年比3%を超えました。この水準は日本では30年ぶりです。欧米諸国ではさらに物価が上昇し、市民生活に大きな影響を与えています。

物価が上昇することをインフレーション、下落することをデフレーションといいます。1990年代にバブル経済が崩壊してから日本では長い間景気が悪く、デフレーションに苦しんできました。景気が良くなると、同時にインフレーションが起こり、人々の賃金も上昇するものですが、その好循環に持っていくことができませんでした。

ようやくインフレーションが起こりましたが、決して景気が良くなったわけではなく、現在起こっているのは「悪いインフレーション」であるという意見もあります。

アメリカなどでは物価上昇を抑えるために金利を上げるなど様々な対策が取られています。しかし、供給の問題でここまで大規模なインフレーションが起こったということは今まで経験したことがほとんどないので、今までと同じような対策では効果がないと主張する学者もいます。

いずれにしろ、我々の生活が苦しくなっているのは事実です。一刻も早くインフレーションが落ち着いて欲しいものです。

コメント