共通試験試行調査 30年 ②

問1

埋蔵量だけ、可採年数だけで解くのは難しい。

まず、西アジアは石油の埋蔵量が一番多いはずである。よって、①

次に、石油の埋蔵量と可採年数を見る。

②は3301億バレルの埋蔵量を126年採れる。③は2261億バレルを31年、④は1265億バレルを43年である。目を引くのは③。1年当たりにすると、ものすごい量を消費(あるいは輸出)していることになる。これが北アメリカ。シェール革命により産出量が増加したが、同時に消費量も多いので可採年数は短くなる。

残りでは、石炭がわかりやすい。②は140億トンを141年かけて採る、④は132億トンを49年かけて採ることになる。南アメリカとアフリカで石炭が大量に消費されるとは考えづらいので、輸出が多い国が④にあると考える。これは南アフリカ共和国であろう。したがって、④がアフリカ。

正解は④

可採年数なんて知らないよ!と思った皆さん。その通りです。これは、知らないでしょう。

覚える必要はありません。ただ、解くにあたってこの数値も使えるはずです。どのように使うか考えてみましょう。

問2

これは特に問題なく解いてほしい。

①は正しい。オーストラリア・ブラジルが輸出量上位。中国は算出はするが、国内消費に向けられている。

②が誤り。最大の輸入国はアメリカ。

③は正しい。石油化学コンビナートでも製鉄所でも生産施設の大規模化やオートメーション化はどんどん進んでいる。したがって、古い施設は生産効率が悪くどんどん潰れていく。

④も正しい。共通試験で(に限らず)注意しなくては行けないのは「量」と「割合」。この問題では増加率が高いとあるので、「割合」である。

正解は②

問3

知識で解くのか、考えるのかで解き方が複数ある。

考えるやり方です。まず、露天掘りはコストが坑道を掘らなくていいので、安く鉱産資源を得ることができる。現在は、コストが最小になるような立地に作られる。そう考えると、安い原料を輸入するのが現在の立地であると考えると、イが現在の図であろう。

イの図の内陸部に古い鉄鋼所が残っている。当然、ここは鉄鉱石が産出する場所であり、かつて工場があった場所である。遠くない将来潰れる工場であるが、ここに工場があるかを他の図で見ると、アにはあるが、ウにはない。ということは、ウが一番古い時代で、次にアとなる。この時代に作られた工場が現在も残っている(ウの時代の工場は全て潰れた)と考えるのが辻褄が合う。したがって、ウが1900年、アが1960年、イが2000年となる。

正解は⑤

元々、鉄を1トン生産するのには石炭4トンと鉄鉱石2トンが必要でした。ということは、炭田立地になります。それが、石炭から効率的にエネルギーを取り出すことができるようになったことで、石炭0.8トン、鉄鉱石1.5トンほどで鉄1トンの生産ができるようになりました。こうなると、鉄鉱石の取れる鉱山立地になります。そして、現在は、さらに効率化が進み、かつ、輸入した方が経済的であることから港湾立地となりました。このことを知っていると、単純に解答を探すことができます。

ちなみに、明治時代に操業を開始した八幡製鐵所は北九州で産出する石炭を使っていました。1900年は明治時代ですから、これも辻褄があいます。

問4

一つ一つ検討してみる。

①について。東南アジア各国の工業化は「輸入代替化型」→「輸出指向型」と変化した。つまり、前半と後半が逆。順番を入れ替えるというのも誤文を作る時のパターンの一つ。

②について。ここでポイントになるのは「貿易額」という点。東南アジア全体の経済が発展したのだから、GDP自体が上がっているはずである。仮に先進国との貿易が増加したとして、その結果、域内貿易の割合が減るのはわかるが、金額は増えるはずである。

③について。中国では(中国に限らず)、重化学工業かが進めば都市人口は増加する。工場労働者が増加するためである。多くの場合、沿岸部の工業地帯に人口が集中し、同時に富も集中する。つまり、地域間経済格差は拡大する。したがって誤文。

④について。現代においては、国際分業は進展している。例えば、タイにホンダの工場ができる。しかし、部品全てをタイで生産しているわけではない。もちろん、日本で部品を作って運ぶわけではなく、簡単な部品は東南アジアの人件費が安い国で生産していることが想像できる。このように、国際分業は進展しているので、④は正文。また、だからこそ、②も語文になる。

正解は④

問5

頻出の発電問題。ただし、「地熱」「バイオマス」がある点が新しい。

まず、水力は答えられる。水力発電割合が高い国といえば、「カナダ」「ブラジル」「ロシア」「ノルウェー」である。中国は「量」は多いが「割合」はそこまで高くない。しかし、この知識があれば、クが水力だとわかる。

残りが引っかかりやすい。考え方は地熱発電はどのようなところで行われるかである。火山があるところ = 環太平洋造山帯であることに気がつけば難しくない。カがこれにあたる。キを見ると、中国・ドイツ・ブラジルは火山が多いわけではない。日本があるから、というのに引っ張られないようにしたい。

カは環太平洋造山帯の国々が集まっている。これが地熱発電。

正解は④

参考までに液体バイオ燃料の生産です。アメリカとブラジルが多いのがわかります。日本は液体バイオエネルギーではなく、ごみ処理施設などの利用が多くなっているようです。

ブラジルはサトウキビからバイオ燃料を作ります。一方、アメリカはトウモロコシから作ります。ただし、トウモロコシは家畜の飼料などになるため、トウモロコシが不足すると肉の値段まで上昇するという自体が生じます。

アメリカはトウモロコシの輸出量が世界一ですが、バイオ燃料に回すとうもろこしが増えたことによって2013年に世界一の座をブラジルに明け渡しました。2016年から再び1位になっていますが、燃料にするために食料が使われるということに批判もあります。

2017万トン
アメリカ527046.7
ブラジル244221.7
ドイツ4013.6
アルゼンチン3553.1
中国3202.8
フランス3062.7
インドネシア3042.7
世界総計11278
液体バイオ燃料の生産量

問6

それぞれがどこの国か具体的にわからなくても考えられる問題。いかにも共通試験らしい問題。

順番に検討する

①について。一人当たりCO2排出量が8カ国の中で最大である。である以上は、環境問題への対策は遅れているのであろう。正文。

②について。CO2排出量が急激に増加しているのは事実(まるが大きい)。人口がそれと同じように増加したとは考えられないので、一人当たりCO2排出量も急増しているであろう。すると、急速に工業化が起こっているというのも正しいと考えられる。正文。

③について。再生可能エネルギーや電気自動車が普及すると、一人当たりCO2排出量やCO2排出量は減少するはずである。つまり右上でなく左下に移動する。よって誤文。

④について。スとセはCO2排出量が多く、一人当たりCO2排出量が小さいことから人口が多い国だと考えられる(おそらく、中国とインド)。すると、この2カ国が発展すると、世界に与えるインパクトも大きいはずである。正文

正解は③

国名百万トン
中国9257.929.4
アメリカ4761.315.1
インド2161.66.9
ロシア1536.94.9
日本1132.43.6
ドイツ718.82.3
韓国600.01.9
イラン567.11.8
カナダ547.81.7
サウジアラビア532.21.7
世界総計32839.9
主な国のCO2排出量

人口が多い国はCO2の排出量が多くなりますね。インドや中国がこれにあたります。また、中国、オーストラリア、南アフリカなどは国内に大きな炭田があるため、石炭の使用量が多いことがCO2排出を押し上げています。

国名一人当たりCO2
サウジアラビア16.16
オーストラリア15.63
アメリカ14.61
カザフスタン14.18
カナダ14.99
アメリカ14.61
カザフスタン14.18
(台湾)11.38
韓国11.66
チェコ9.60
オランダ9.08
日本8.94
世界平均4.37
一人当たりCO2排出量

アメリカやカナダ、ロシアは国土が高緯度にあるため、暖房の使用によるCO2排出が多くなっています。また、アメリカ、カナダ、オーストラリアは国土が広大なため、国内移動に航空機を使用することが多いためCO2排出を押し上げます。サウジアラビアは人口はあまり多くない(3400万人程度)ですが、自国で石油を産出するためエネルギー価格が安く、使用量が多いことで有名です。サウジアラビアは産出する石油の30%を国内で使用してしまいます。これはクウェートやアラブ首長国連邦、カタールなども同じことが言えます。上の表にイランが入ってくるのも、サウジアラビアほどでないにしても同じようなことは言えると思います。また、韓国は鉄鋼業や造船業など大規模な製造業が盛んなことがCO2排出を押し上げています。

上に挙げたように、「理由を説明できる」部分を覚えるのが統計資料を覚えるコツです。

ヨーロッパでは欧州鉄道年2021という取り組みをおこなっています。飛行機の利用をやめ、鉄道を利用することでCO2排出量を削減しようという取り組みです。かなり大胆なCO2排出削減策を目指しています。上の動画はその取り組みの紹介動画です。50秒ほどの動画ですので、何かの時に息抜きにでもご覧ください。

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